神戸市指定文化財B家住宅 馬舎コンバージョン

文化財の住まいを守り続ける
神戸市北区の農村地帯に、土蔵や納屋、旧馬舎、車庫などと一連に構える立派な茅葺き民家がある。茅葺き屋根の葺替えの相談にのらせていただいた施主から、農家をつぐ若い世帯の住まいを、旧馬舎を使って整備できないかとのお話があった。現地を確認すると旧馬舎はかなり傷んでいるところはあるが、立派な屋敷構えに変化を与えず、十分に可能であることをがわかった。永く大切に住まわれてきた家をこれからも守り続けられるよう、新世帯の住まい環境だけでなく、浄化槽の設置やトイレの水洗化、現代的な設備や環境性能を取り入れることもあわせて実現した。

 

馬舎の小単位空間を大きなワンルームへ
建物が小さいため、ユーティリティ以外はワンルームのように使える空間とした。立派な主屋や付属屋があることを考慮し、将来的に附属屋等へこども部屋を拡張するなどの前提で、家族の状況が変わってもそのまま快適に使い続けられるよう調整した。
クライアントとは、10以上のプランを検討したが、最終的に最もシンプルで無駄のない案を採用することとなり、小さな収納やロフトを組み合わせて、古い構造の中に立体的で遊び心のある空間が生まれた。こども部屋や自然豊かな屋外とのつながりについては、将来的に整備できるといいですね、ということで夢の続きを残している。

 

古材のクセに愛着がわく
松材が多く使われた旧馬舎は、いくつかの柱や梁が大きく捻れたり曲がったりしており、それらがリビングに堂々と立っている。設計時にこういった柱が現れるのが変にならないかと心配していたクライアントだったが、完成後はむしろ愛着を持って来客にも紹介している。作ろうと思っても作れない、かなりのねじれ具合で、むしろ見てほしい家のシンボルになっている。

設計情報

竣工
2024年
場所
神戸市北区
用途
住宅
規模/構造
52㎡ 平屋建+ロフト/木造
設計
藍設計室と共同
施工
有限会社あかい工房